○青木村太陽光発電設備の適正な設置及び維持管理に関する条例

令和4年3月18日

条例第1号

(前文)

青木三山に抱かれた青木村は、塩田平に向かって開けた扇状地に、浦野川をはじめ幾筋もの清らかな河川が流れ、長い年月をかけて育まれた豊かな農地や自然環境と調和した集落を形成してきた。先人たちによって培われたこうした農村景観や、古道東山道の駅寺として創建されたといわれる国宝大法寺など歴史ある建造物が周囲と一体的につくり出す趣のある環境、山間の古湯、田沢・沓掛温泉の風情ある湯場の景観や情緒あふれる温泉街の雰囲気など、これらは村民共有の財産として、後世に確実に継承していかなければならない。他方で、社会基盤の整備や産業の転換・創出を図る取組も不可欠で、豊かな環境との調和を図りながら村の発展に導く持続可能な村づくりが求められている。とりわけ、地球温暖化防止の観点から社会の要請でもある自然エネルギーを活用する発電事業にあっては、災害防止や自然環境等保全の観点から十分な配慮が求められる。

この条例は、自然エネルギーのなかでもとくに立地ニーズの高い太陽光の発電設備について、その適正な設置及び維持管理の資する事項を定めるものである。

(目的)

第1条 この条例は、太陽光発電事業が防災上並びに自然環境、生活環境、歴史的・文化的資産及び景観(以下「自然環境等」という。)に及ぼす影響を鑑み、当該事業における太陽光発電設備の設置及び維持管理に関して必要な事項を定めることにより、村民の生命及び財産の保護を図るとともに、良好な自然環境等を保全し、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 太陽光発電設備 太陽光を電気に変換する設備及びその付属設備であって、土地に自立して設置されるものをいう。

(2) 太陽光発電事業 太陽光発電設備を利用し発電を行う事業をいう。

(3) 事業者 太陽光発電事業を行う者をいう。

(4) 事業区域 太陽光発電事業の用に供する土地の区域をいう。

(5) 周辺住民等 事業区域(太陽電池モジュールの築造面積の合計が20平方メートルを超える場合にあっては、事業区域の範囲が事業者又は権利者の土地の一部であっても、当該区域と連続しているとみなされる当該事業者又は当該権利者の土地の全部の範囲を事業区域とみなす。以下第6号において同じ。)の境界から200メートル以内の距離にある土地、建築物及び工作物の所有者、占有者、管理者、借主又は居住者並びに事業区域の存する自治会及び当該区域の境界から200メートル以内の距離にある自治会の代表者をいう。

(6) 近隣住民等 事業区域の境界から50メートル以内の距離にある土地、建築物及び工作物の所有者、占有者、管理者、借主又は居住者(同一の世帯に複数の居住者がいる場合はそのうちの代表者1名。以下同じ。)をいう。

2 この条例において使用する用語は、都市計画法(昭和43年法律第100号)、建築基準法(昭和25年法律第201号)及び建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)において使用する用語の例による。

(村の責務)

第3条 村は、この条例の目的に沿って、村内における太陽光発電事業の計画及び実施状況の把握に努めるとともに、村民に対して適切な情報提供がなされ、事業者によって太陽光発電設備が適正に設置及び維持管理されるよう必要な措置又は施策を講ずるものとする。

(事業者の責務)

第4条 事業者は、この条例の目的に沿って、太陽光発電設備の適正な設置及び維持管理のために村が講ずる措置又は施策に積極的に協力しなければならない。

2 事業者は、太陽光発電事業の計画及び実施に際しては、この条例に定めるもののほか関係法令の規定を遵守しなければならない。

3 事業者は、事業区域の選定に当たっては、災害の防止又は自然環境等の保全の観点から、必要な情報収集を行ったうえで、十分な検討を行い、災害の発生や自然環境等の悪化を招くおそれのある土地を事業区域として選定しないよう配慮しなければならない。

4 事業者は、太陽光発電事業を計画するとき、実施しているとき(中断しているときを含む。)、又は廃止するときは、災害の防止及び自然環境等の保全のために必要な措置を講じなければならない。

5 事業者は、太陽光発電事業が事業区域周辺の住環境に及ぼす影響を十分に考慮し、当該事業の計画及び実施に当たっては、周辺住民等に適切な情報提供を行い、周辺住民等からの意見に誠実に応え、良好な関係を保つよう努めなければならない。

6 事業者は、太陽光発電事業に係る事故が発生したとき、又は苦情若しくは紛争が生じたときは、直ちに村長に報告し、必要な措置を講じるとともに、誠意をもってその解決に当たらなければならない。

7 事業者は、太陽光発電事業に係る災害時及び廃止後の措置に充てる費用について、計画的に積み立てを行わなければならない。

(禁止区域)

第5条 何人も、次の各号に掲げる区域(以下「禁止区域」という。)において太陽光発電事業を行おうとしてはならない。

(1) 森林法(昭和26年法律第249号)第25条若しくは第25条の2の規定により指定された保安林若しくは第41条の規定により指定された保安施設地区の区域又は当該区域に準ずるものとして災害の発生を防止する見地から規則で定める区域

(2) 砂防法(明治30年法律第29号)第2条の規定により指定された土地

(3) 地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)第3条の規定により指定された地すべり防止区域

(4) 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域

(5) 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第9条第1項の規定により指定された土砂災害特別警戒区域

(6) 長野県自然環境保全条例(昭和46年条例第35号)第15条第1項の規定により指定された郷土環境保全地域

(事前協議)

第6条 事業者は、太陽光発電設備を設置しようとするときは、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号。以下「特別措置法」という。)第6条に基づく再生可能エネルギー発電事業計画の提出等の前に、又はあらかじめ、太陽光発電事業に関する計画(以下「事業計画」という。)の素案について村長と協議しなければならない。

2 村長は、事業計画の素案が災害の防止又は自然環境等の保全に影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、関係する自治会、市町村及び行政機関の長に通知し、意見を求めることができる。

3 村長は、第1項の協議が終了したときは、事業者に通知するものとする。

(標識の設置)

第7条 事業者は、周辺住民等に事業計画を公開するため、次条第1項の規定による説明会の開催の30日以上前から第13条第1項の規定による太陽光発電設備の設置完了の届出を行う日(当該事業計画を廃止した場合はその日)まで、事業区域内の道路に面した見やすい場所に標識を設置しなければならない。

2 事業者は、前項の規定により標識を設置したときは、速やかに村長に届け出るものとする。

(周辺住民等への説明)

第8条 事業者は、前条の規定による標識の設置後、次条第1項の規定による同意を得る前に、事業区域の周辺住民等に対し、説明会を開催して、事業計画の内容その他関連する事項を説明しなければならない。

2 事業者は、太陽光発電事業について、周辺住民等以外の村民又は関係する自治会から、当該事業に関する説明を求められた場合も、前項と同様に、当該村民又は自治会に対し、説明会を開催しなければならない。

3 事業者は、太陽光発電事業について、第1項及び前項による説明会の対象者の理解が得られるよう努めなければならない。

4 事業者は、第1項又は第2項の規定により説明会を開催したときは、第10条第1項の規定による提出を行う14日前までに、村長に報告するものとする。

5 村長は、前項の規定による報告の内容について、当該説明会の参加者に確認を求めることができる。

(近隣住民等の同意)

第9条 事業者は、太陽光発電事業について、次条第1項の規定による提出の前に、近隣住民等の対象者の3分の2以上の同意を得なければならない。

2 事業者は、前項の規定による同意を求めるときは、事業区域の近隣住民等が同意の有無を判断できる資料又は情報を提供し、当該内容について説明を求められた場合は、可能な限りこれに応じるものとする。

(事業計画の案の提出)

第10条 事業者は、前条の規定による同意を得た後、当該設置工事に着手する日の60日前までに、事業計画の案を村長に提出するものとする。

2 事業者は、次条第1項の規定による協定を締結するまでの間に、前項の規定により提出した当該事業計画の案の内容を変更しようとするときは、村長に届け出るものとする。

3 村長は、前項の規定による提出がなされたときは、当該変更内容に応じ、第6条から前条までの規定を準用して、事業者に必要な措置をとることを求めることができる。

4 事業者は、事業計画の開発行為の事業主等を変更しようとするときは、村長に届け出るものとする。

5 事業者は、第1項の規定により提出した事業計画の案を取り下げるときは、村長に届け出るものとする。

(協定の締結等)

第11条 村長は、前条の規定により提出された事業計画の案が、この条例の目的その他の規定、関係法令及び青木村太陽光発電設備に関する技術的細目に照らして適正と認めるときは、太陽光発電事業に関する協定書に基づき、事業者と当該事業の実施に関する協定を締結するものとする。

2 事業者は、前項の規定により締結した協定を忠実に守らなければならない。

3 事業者は、開発区域内の土地又は太陽光発電設備を第三者に譲渡しようとするときは、譲渡人に対し、第1項の規定により締結した協定内容並びに村長及び近隣関係者との協議内容及び指示事項を継承するものとする。

(工事着手の届出)

第12条 事業者は、村長と前条第1項の規定による協定を締結しなければ、太陽光発電設備の工事に着手することはできない。

2 事業者は、太陽光発電事業における太陽光発電設備の工事に着手しようとするときは、村長に届け出なければならない。

3 事業者が、前条第1項の規定による協定締結後、工事着手予定日を1年以上過ぎても、正当な理由なく、工事に着手しない場合は、当該協定締結の効力を無効とする。

(工事完了の届出)

第13条 事業者は、太陽光発電事業における太陽光発電設備の工事が完了したときは、村長に届け出なければならない。

2 村は、前項の規定による届出が出されたときは、当該工事の完了を確認したことを事業者に通知するものとする。

(運用開始の届出)

第14条 事業者は、太陽光発電設備の運用を開始するときは、村長に届け出なればならない。

(維持管理)

第15条 事業者は、前条の規定による届出後、事業区域内の道路に面した見やすい場所に、当該太陽光発電設備の管理者として、当該事業者に関する情報を示す標識を設置しなければならない。

2 事業者は、前項の規定による設置を行ったときは、村長に届け出るものとする。

3 第1項及び前項の規定は、事業者に関する情報の変更を行った場合において準用する。

4 事業者は、太陽光発電事業を実施又は中断している間、災害防止又は自然環境等の保全上に支障が生じないよう、太陽光発電設備及び事業区域を常時安全かつ良好な状態に維持管理しなければならない。

(地位承継)

第16条 事業者は、太陽光発電事業の管理者の地位を承継したときは、村長に届け出なければならない。

(廃止等の届出)

第17条 事業者は、太陽光発電事業を廃止、中断又は再開しようとするときは、村長に届け出なければならない。

2 事業者は、太陽光発電事業を廃止しようとするときは、廃止時に必要な措置を講じなければならない。

3 事業者は、前項の規定による措置が完了したときは、その完了の日から起算して30日以内に、村長に届け出なければならない。

(国又は県に対する特例)

第18条 国又は県の機関が事業者となる太陽光発電事業については、第6条から前条までの規定は適用しない。この場合において、当該国又は県の機関はあらかじめ村長と協議しなければならない。

2 前項の規定による協議をした者が、当該協議の内容を変更しようとするときは、あらかじめ村長と協議しなければならない。

(報告等の徴収)

第19条 村長は、この条例の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対し、太陽光発電事業に関する状況等の報告又は資料の提出を求めることができる。

2 事業者は、前項の規定による報告を求められた事項については、速やかにこれに対する報告書を作成し、村長に提出しなければならない。

(立入調査等)

第20条 村長は、この条例の施行に関し必要な限度において、その職員に事業区域に立ち入らせ、必要な調査をさせ、又は関係者に質問させることができる。

2 前項の規定による立入調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第1項の規定による立入調査の権限は、これを犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(助言、指導及び勧告)

第21条 村長は、必要があると認めるときは、事業者に対して、必要な措置を講ずるよう助言又は指導を行うことができる。

2 村長は、次の各号のいずれかに該当する場合は、事業者に対して、期限を定めて必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

(1) 事業者が、第6条第1項の規定による協議を行う前に、特別措置法第6条に基づく再生可能エネルギー発電事業計画の提出をしたとき。

(2) 事業者が、第7条第2項第10条第2項第4項若しくは第5項第12条第2項第13条第1項第14条第15条第2項第16条又は第17条第1項若しくは第3項の規定による届出を行わなかったとき、又は届出内容に虚偽があったとき。

(3) 事業者が、第8条第4項本条第3項又は第22条第2項の規定による報告が行われなかったとき、又は報告内容に虚偽があったとき。

(4) 事業者が、第10条第1項又は第19条第2項の規定による提出を行わなかったとき、又は提出内容に虚偽の内容があったとき。

(5) 事業者が、第11条第1項の規定による協定を締結する前に、太陽光発電設備の工事に着手したとき。

(6) 事業者が第11条第2項の規定による協定内容を守らなかったとき。

(7) 事業者が適正な維持管理又は撤去時の措置を怠り、事業区域外に被害を与えたとき、又は被害を与えるおそれがあるとき。

(8) 太陽光発電事業が、災害防止又は自然環境等の保全において、重大な影響を及ぼすおそれがあると認めるとき。

(9) 事業者が前項の規定による助言又は指導に正当な理由なく従わなかったとき。

3 事業者は、第1項の規定による助言若しくは指導、又は前項の規定による勧告を受けたときは、速やかに必要な対応又は措置を講じ、その旨を村長に報告しなければならない。

(命令)

第22条 村長は、次に掲げる事業者等に対し、事業の停止を命じ、又は相当の期限を定めて、事業に伴う自然環境等の保全又は災害の防止のために必要な措置を講ずることを命ずることができる。

(1) 第5条又は第12条第1項の規定に違反して、太陽光発電設備の工事に着手したとき。

(2) 前条第2項の規定による勧告に正当な理由なく従わなかったとき。

2 事業者は、前項の規定による命令を受けたときは、速やかに必要な対応又は措置を講じ、その旨を村長に報告しなければならない。

(公表)

第23条 村長は、第21条第2項の規定による勧告又は前条の規定による命令(以下「命令等」という。)を行ったときは、当該命令等の内容、当該命令等を受けた者の氏名(法人その他の団体にあっては、その名称及び代表者の氏名)その他規則で定める事項を公表することができる。

(委任)

第24条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、令和4年4月1日(以下「施行日」という。)から施行する。

(経過措置)

2 この条例は、施行日前に青木村太陽光発電設備設置事業指導要綱(平成29年青木村要綱第1号)第6条第2項の規定による事前協議済通知書の交付を受けた太陽光発電事業については、第7条から第14条までの規定は適用しない。

青木村太陽光発電設備の適正な設置及び維持管理に関する条例

令和4年3月18日 条例第1号

(令和4年4月1日施行)